No.25 いつ、避難を始めますか?(2021年8月)

2021年7月の大雨を、大雨時に公から出される情報と併せて振り返ります。

いつ、避難始めますか?】/【お話聞きました!土砂崩れのサイン 応用地質株式会社矢部満さん】/【土砂崩れの土砂災害特別警戒区域が指定されました!】/【コロナ禍での避難所 気になること、訊きました】/【上山口小避難所運営委員会 コロナ対策、進む】/(No.25紙版)

――7月3日の大雨では、横浜横須賀道路の逗子インターチェンジ近くで、車を巻き込む土砂崩れが発生しました。葉山町内でも、大峰山の北側斜面が30m上方から崩れ落ち、住宅の一部を埋める土砂崩れが発生しました。

気象庁は、1日から土砂災害に気を付けるよう呼びかけを続けていました。でも、自宅の隣の斜面にどこまで危険が迫ってきているかはわかりません。

今号では、この大雨を振り返りながら、土砂災害からの避難について考えます。

いつ、避難を始めますか?ーー土砂災害の視点から

土砂災害の視点から①7月の大雨を振り返る

下の図は、今回の大雨での時間ごとの降水量と地盤の水の含み具合(土壌雨量指数*)の変化を示したものです(注)。
7月の大雨を振り返ってみると——雨は、激しくなったり、静かになったりを繰り返していましたが、地盤の中の水は、じわじわと増えていったのがわかります。また、梅雨ということもあり、続けて雨が降り出す前から、地盤には水が溜まっていました。

2021年7月豪雨グラフ

気象庁辻堂データより作成(応用地質株式会社 矢部さん提供)

土砂災害の視点から②「大雨警報(土砂災害)」

7月1日(木)9:42、気象庁は、葉山町に『大雨警報(土砂災害)』を発表しました。
この『大雨警報(土砂災害)』は、一般に、市町村が『高齢者等避難』を出す際の目安とされています。 この『大雨警報(土砂災害)』が気になった方もいらっしゃったのでは? でも、雨は途中で止むこともあったため、2日(金)にかけてはいつも通りの生活を続けていた方が多かったのではないでしょうか。

土砂災害の視点から③「土砂災害警戒情報」

深夜、7月3日(土)になると雨は非常に激しく降り出します。6:40、葉山町にも、『土砂災害警戒情報』が発表されました。

この『土砂災害警戒情報』は、神奈川県と気象庁とが相談して出すもので、地盤が大量の雨水を含み、“土砂崩れや土石流がいつ起こってもおかしくない状況が迫っている!”ことを知らせるものです。一般に、市町村が『避難指示』を出す際の目安とされています。

土砂災害の視点から④30m上方より斜面崩れる

『土砂災害警戒情報』が出された後、雨はさらに強さを増していきます。斜面から流れ出す水が様々な場所に溜まっていきました。

三ヶ岡斜面でのことです。10:00ごろ、少し雨が弱まってきたころでしょうか。あるお宅の裏側斜面からザっとという大きな音がして大量の土砂が崩れ落ち、建物の一部を埋めてしまいました。『土砂災害警戒情報』が出されてから数時間の中での出来事でした。

 

 

これから、葉山町に『大雨警報(土砂災害)』や『土砂災害警戒情報』が出されたときには、この地盤の中の水の量をイメージしてみてください。 斜面(地盤)には、崩れそうなほどに水がいっぱいになっているかもしれません。今回の大雨のように、避難するタイミングの難しい雨もありますが、斜面の近くにお住まいのみなさんは、是非、今回のご自宅周りの水の様子を思い出しながら、避難のタイミングを考えてみてください。

土砂災害の視点から⑤2つ目の避難先を

この大雨では、葉山町から、避難指示等や避難所開設のお知らせはありませんでした。しかし、土砂崩れ発生後11:00近く、防災メール等を通じ、自主避難(親類・友人宅、町内会会館等への避難)の呼びかけがありました。
もしも、避難しようとした際に避難所が開設されていなかったら・・・。安全な2つ目の避難先を家族で相談しておく必要がありそうです。避難する際に通る道についても、危険がないかを確認しながら。

お話、聞きました! “土砂崩れのサイン” 応用地質株式会社 矢部満さん

今回の堀内の土砂崩れは、葉山層群の泥岩と砂岩の互層からなる斜面で発生しました。この地層は、葉山町内ほぼ全域に存在するもので、比較的硬いものですが、場所によっては粉々に割れ、また水分を含むと滑りやすくなるといった土砂崩れを誘発しやすい特徴を持っています。

今回の土砂崩れは、『土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)』の斜面で発生しました。 同じ地層である町内のレッドゾーンや『土砂災害警戒区域(イエローゾーン)』の斜面では、大雨の際には今回のような土砂崩れが発生すると考えてください。 大雨のときに、斜面近くの道路に山からの水が溢れていたり、普段ほとんど水が流れていない沢に音を立てて水が流れていたりする場合は、斜面の中に水分がいっぱいになってきている証拠です。

このようなときに、気象庁から「大雨警報」や「土砂災害警戒情報」が発表されていたら、斜面から直ちに離れたり、斜面からもっとも遠い部屋に移ったりするなど、自分、高齢者そして子供たちの安全を確保する行動をとりましょう。

土砂崩れの土砂災害特別警戒区域が指定されました!

2021年3月、葉山町内の土砂崩れ*の土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)が指定されました。神奈川県HP内『神奈川県土砂災害情報ポータル (pref.kanagawa.jp)』から 細かな情報がチェックできます。

  1. 神奈川県土砂災害情報ポータル」を開く。
  2. その中にある「土砂災害のおそれのある区域」をクリック
  3. 出てきた「土砂災害警戒区域等」の地図を拡大。拡大することで、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)、土砂災害特別警戒区域(レッドソーン)が表示される。(それぞれの区域が黄、赤に塗られている。)
  4. 詳しく知りたい区域をクリック。「検索結果」として知りたい区域の情報がでてくる。その中の「区域図」に細かな情報が示されている。(「土砂災害警戒区域等指定図(その2)」

*HP上、土砂崩れは「急傾斜地の崩壊」と表記されています。 神奈川県HPで紹介されているこの図面は、葉山町の作成する現在の土砂災害ハザードマップに、「急傾斜地の崩壊」の土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)が加わったものです。

コロナ禍での避難所 気になること訊きました

コロナ禍の避難所への避難。 ワクチン接種がまだの方は、やっぱり“コロナ”が気になります。 そんな気になることについて、神奈川県や葉山町に訊きました。

感染者(自宅療養)は、どこに避難しますか?

“自宅療養をしている感染者は、自治体の誘導で、感染者用に指定されている宿泊療養施設に避難することになっています。”(神奈川県)

濃厚接触者は、どこに避難しますか?

“濃厚接触者になった人には、すぐにPCR検査を受けてもらっています。ですから、地域で生活しているのは陰性と結果の出た人だけ。みなさんと同じ避難所に避難することになります。”(神奈川県)

(避難所に避難した際に)熱のある人等は、どこに避難しますか?

(既にコロナ対策の検討をしている上山口小避難所運営委員会では、)“まず体育館前の事前受付で体温を測ります。そこで発熱が確認された人は、発熱者用の専用ルートを通って発熱者用の教室へ。その教室で個別に待機してもらいます。”(葉山町)

(3密対策の下)各避難所には、何人まで避難できますか?

“3密対策として、町では、各避難所に間仕切りを用意しています。体育館内に通路を確保しながら並べると、72体(1体に1世帯)が設置可能です。”(葉山町)——1世帯2人で計算すると、体育館内には150人ほどが避難できそうです。また、校舎内の教室(一部を除く)も避難スペースとして利用できるそうです。

 

避難する際には、どんなものを用意したらいいですか?

“(配布時の密を避けるために)避難の際は、自らの食料を持参してください。その他には、通常の避難グッズに加えて、マスク(予備も含めて)、体温計、消毒液、ハンドソープ等を用意してください。” (葉山町)

神奈川県「新型コロナウイルス感染症 自宅・宿泊療養のしおり」参照

上山口小避難所運営委員会 コロナ対策、進む

7月18日(日)、上山口小学校では、同避難所運営委員会による「防災倉庫資機材・備品点検訓練」が開かれました。
運営委員のみなさんや学校、町とがこれまで一緒になって検討してきた避難所のコロナ対策 ——“発熱者への対応方法”や“避難スペースとしての校舎の使い方”等について、地域のみなさんに丁寧な説明が行われました。また、町が避難所のコロナ対策として準備している資機材や備品についての紹介もありました。どれも避難する私たちが、台風の来る前に、知っておきたいこと、相談しておきたいことばかりでした。

(No.25 紙版)

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